倒産の私的研究
こんにちは
いつもありがとうございます
当社の源流は
私の曽祖父が始めた
創業1905年の宝飾メーカーです
聞いた話ですが
地元の宝飾メーカーでは
5番目の古さだそうです
曽祖父は職人でした
地元の大店の下請けだったそうです
祖父は下請けの安住から
製品を自分のリスクで作り
自分のリスクで売り始めました
父は祖父の方針を広げて
市内のビジネスから脱却して
全国へ売りに行きました
私は父の会社で
しばらく営業をしたのち
生産受託の仕事を始め
別会社化しました
別会社化の前は
父の会社で修行してました
仕入れや
製品の良し悪し
職人の気質
組織
などですが
本当に勉強になりました
特に、一番勉強になったのは
「お客様の求めること」
優秀なお客様には見えない要望があります
その要望を叶えるように努力することで
会社は強くなり
成長することがよくわかりました
2番目は
「なぜ倒産するのか?」
を学べたことです
私が修行し始めて
3年後くらいにバブル崩壊
その後、お客様や同業者が
どんどん倒産しました
その様をつぶさに見て
自分なりに
「どういう企業が倒産するのか」
すなわち
「何をしてはいけないか」
を考察できた
これがとても勉強になりました
その倒産事例の中でも
祖父らが始めた同業者のグループ
このグループを構成していた24社の
栄枯盛衰を見ることができたことは
とても勉強になりました
先日ある人から
「見る影もない」
と指摘され
あらためて、この24社の
その後を追ってみました
現在
廃業もしくは倒産が、13社
開店休業状態が、6社
生き残りは5社
生き残りは5社でも
5年後に向けて投資できているのは
2社のみ
恐ろしい数字だと思いませんか
なぜこのグループがダメになったのか
以下は私の考察です
このグループ
同業者で共同展示会を開き
全国から問屋さんや小売店さんを呼ぶ
そういう共同仕入れ会を開催していました
バブル前の全盛期を私も見ています
正確な数字は覚えていないのですが
今の年間売上に匹敵する売上を
3日間で作っていました
これを年に2回行いました
とても簡単に大きな売上ができるので
他の月は営業活動をしない会社もあるくらい
この共同展示会の、そもそも、は
宝飾卸のビジネスは
2月と8月の売上が慣習的に悪かった
それを補うために始めたのだそうです
だから年2回、2月と8月
ところがこの展示会の売上が
メインになった会社がありました
本末転倒です
この展示会での売上は
各社均一ではありませんでした
6割は4社が作っていました
この4社が集客するので
そのおこぼれを期待する会社もありました
そういう会社は、売上が落ちた時
集客できる4社が
「お客を囲い込んで
オレたちに客を回さないのではないか」
と勘ぐっていました
集客は売上に直結するので
努力を惜しんではいけないことですが
その肝心かなめの集客で
他社をあてにしている会社がありました
商品も各社様々です
自社で多数開発要員を抱えて
毎回新製品を売り出す会社もあれば
開発費を惜しみ
他社からの仕入れで済ます会社もありました
もっとひどい会社は
売れている会社のヒット製品を
コピー販売していました
景気がいいときは
独自性がない製品でも売れるでしょう
ですが、
その会社ならでは、がないならば
お客様はいつか離れてしまいます
展示会の運営費は各社の均等割りではなく
売上額の大きさで決まりました
経費は売上で各社の負担が決まりましたが
運営会議の投票権は
売上に関係なく、1社1票でした
当然、
売上の小さい会社に有利な条件が決定され、
売上の大きい会社の負担が
重くなっていきました
例えばですが、
売上に陰りが出始めたとき
こういう提案がありました
「新しい製品やサービスを持つ
新しいメンバー企業を募集したらどうか」
展示会全体としては売上増が見込めます
ところが、
大手のおこぼれ売上に依存している会社は
新メンバーが参加すればその会社に
おこぼれを奪われかねないと懸念して
大反対でした
私はこう発言したことを憶えています
当時、ギボンの「ローマ帝国衰亡史」を読んでいたので
「ローマ帝国の繁栄は
新しい血を入れ続けたことによる」
「目先の損得は考えず
全体の利益を考えるべきだ」
大手4社より
数ではおこぼれ組の方が多いので
多数決の結果、否決されました
現状維持以外の
選択はできない仕組みでした
改革がままならないなら
組織は次第に、
時代においていかれます
おいしいビジネスは
すぐに他社も後追いします
後発メーカー20社が
同じような仕組みの展示会を始めました
その後も新規参入は続きましたし
展示会開催をビジネスにする会社は
もっと規模が大きく、
魅力的な展示会を始めました
その後、
展示会で仕入れる、ということがなくなり
展示会のニーズが変化し
そもそも
ユーザーの嗜好の変化に
ついてこれない企業は淘汰されましたので
展示会に来場する企業が激減しました
このグループは現在
活動を停止しています
どういう会社が倒産したのか
改めて説明するまでもないと思います
5年後にも
確実に生き残っているであろう2社が
どんな特性を持つ企業なのか
ご説明申し上げなくても
おわかり頂けると思います
私が生き残ることができたのは
曽祖父、祖父、父から学んだからです
祖父も父も
ビジネスの姿勢は変えず
新しいマーケットにチャレンジしました
「同じ仕事をいつまでも続けることはできない」
ビジネス本やセミナーなどなかった時代ですが
祖父たちは本能的に
このことを知っていたのだと思います
父の仕事の様を見ることができたのは
とても大きい収穫でした
心から感謝しています
ありがとうございました
株式会社J-one
代表取締役 島田逹己